泌尿生殖器とは、排尿を行うときに通る臓器(腎臓・膀胱・尿管)と繁殖に関する臓器(精巣・卵巣・前立腺)を指します。
主に高齢の動物によく起こる疾患ですが、危険性の高い病気が多く、早期発見が重要となります。若齢期から避妊去勢手術などを行うことによって、病気の予防につながるケースもありますので、ぜひご相談ください。
尿が出にくい・何回もトイレに行くが尿があまりでない・血尿がでる・尿をするとき痛そうなどがみられます。
犬にもみられますが、猫ではさらによくみられます。
細菌感染(犬、高齢猫)・尿石(犬、猫)・特発性(猫のストレスに関連して起こるといわれています)などが原因となります。
細菌感染では適切な抗生物質を使います。尿石の存在が細菌感染の原因となっていることもあるので、その場合は食事療法を行います。尿石は基本的に食事療法で治療を行いますが、外科手術が必要となることもあります。
猫の特発性は痛み止め(膀胱の不快感を抑える)・点滴(水分を増やし尿中の痛みを起こす物質を薄めて出す)・ストレスを減らす・食事療法により治療を行います。治療により膀胱の炎症が治まり、尿がスムーズに出ます。
水を飲む量が多い・尿の量が多い・痩せてきた・よく吐く・元気がない・食欲が落ちてきたなどがみられます。
猫によくみられますが、犬でもみられます。
主に加齢による腎機能の低下により起こります。若くても腎炎の進行・急性腎臓病の後遺症や生まれつきの異常(猫の多発性嚢胞腎など)により発症することもあります。
一度低下した腎機能は元に戻りませんが、今残っている腎臓を長持ちさせるために腎臓の負担を下げる治療を行います。点滴(水分、ミネラル補充)・食事療法(低タンパク、低リン、低ナトリウム)・ダルボポエチン(腎臓病が原因で起こる貧血治療のためにホルモン剤)・ベナプロストナトリウム(腎臓病の進行を遅くする)などで治療を行います。
高血圧・タンパク尿があれば、その治療も行います。また水分をたくさんとる工夫もしてもらいます(缶詰に変えるなど)。整腸剤や吸着剤などのサプリメントを使うこともあります。治療により腎数値が改善されると食欲、元気の回復がみられます。
急激に元気がない・食欲がなくなる・よく吐く・尿の量が少ない・尿が出ないなどがみられます。
犬、猫ともにみられます。
細菌感染・ウイルス感染・尿路(尿道・尿管)が詰まる・腎炎・腫瘍・ブドウ(犬)・ユリ(猫)・NASIDs(炎症を止める薬)・重度の脱水・重度の心臓病などが原因で起こります。
原因に応じた治療を行います。それと同時に点滴・利尿剤(尿を増やす薬)で腎臓の血流量を増やします(心臓が原因の場合は点滴の量を増やしすぎないようにします)。慢性腎臓病と違い急性腎臓病は腎機能が完全に治る可能性があります。そのためには初期のしっかりとした治療が重要です。
外陰部からドロッとしたものがでる・水をよく飲む・尿の量が多い・元気がない・食欲がないなどがみられます。
避妊をしていない中年~高齢の雌犬でよくみられます。犬と比べるとめずらしいですが雌猫でみられることもあります。
卵巣からのホルモンのバランスが崩れ、子宮の運動性と免疫力が低下して子宮の中に膿が貯まり、炎症が起こります。その炎症が体全体に広がっていき、体調を崩します。
外科手術により卵巣と子宮を摘出するのが一般的です。内科治療(アグリ プレストンなど)でも高確率で治りますが再発することも多いです。外科手術では、手術自体を乗り切ることができれば再発は起こりません。
水を飲む量が多い・尿の量が多い・痩せてきた・よく吐く・元気がない・食欲が落ちてきたなどがみられます。また尿検査で尿タンパクがよくみられます。
犬によくみられます。犬と比べると珍しいですが、猫でもみられます。
代表的なものは腎盂腎炎と糸球体腎炎です。腎盂腎炎では細菌の感染(尿中からの感染が多い)が原因となり、糸球体腎炎では過剰な免疫による腎臓の破壊が原因となります。フィラリア・ウイルス(FeLV、FIV、FIP、アデノウイルス)なども糸球体腎炎の原因となります。
腎盂腎炎では、適切な抗生剤を使用して細菌をやっつけます。同時に腎臓のケアのために点滴なども行います。適切な抗生剤により細菌がいなくなれば腎臓の状態が回復します。糸球体腎炎では原因が分かればその原因の治療を行います(わからないケースも多いです)。
一般的な治療は食事療法、腎臓の圧を下げてタンパク尿を減らす薬、高血圧があればその治療、血栓をできにくくする薬(糸球体腎炎では血栓ができやすくなります)を行います。免疫を抑える薬が必要となることもあります。治療がうまくいけば腎臓の炎症が治まり腎機能が長持ちします。