2025.12.12
「うちの猫、いつもと声が違う気がする」
「声がかすれて小さくなった」
「急に大きな声で鳴くようになった」
このような変化に気づき、「喉の病気だろうか」「痛くて鳴いているのか」と心配されて当院を受診される飼い主様が少なくありません。
猫の鳴き声の変化は、軽い風邪から緊急性の高い病気まで、様々な原因で起こります。中には、一般的な検査では原因が特定しにくい症例もあり、専門的な診断が必要になることがあります。
動物病院京都 桂の黒島院長は、**全国に48名(2025年10月時点)しかいないJAHA内科認定医**として、専門的な診断と治療を行っております。京都・関西圏はもちろん、遠方からもご相談をいただいております。
今回は、猫の鳴き声が変わる主な原因と、より専門的な診断が必要となる理由について解説します。
まず、猫がどのように声を出しているかを簡単に説明します。
猫は、人間の「声帯」とは異なる構造を持っています。喉頭(喉)にある**「特殊化粘膜」**という器官が、鳴き声を出す役割を果たしています。
喉頭の役割:
喉頭やその周辺に問題が起きると、鳴き声に変化が現れます。声の変化は体からの重要なサインです。
猫の鳴き声が変わる主な原因を解説します。
最も多い原因です。
猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルス(ウイルス性鼻気管炎)などのウイルス感染により、喉に炎症が起こります(参考:Merck Veterinary Manual, 2024)。人間が風邪をひいて声がかすれるのと似たような状態です。
声がかすれたり、出ない以外に以下のような症状を伴います:
注意が必要なケース: 食欲が落ちている場合や、黄色い目やにが出ている場合は、脱水や栄養状態の悪化により入院治療が必要になることがあります。「猫風邪だから大丈夫」と考えず、早めの受診が大切です。
\猫風邪の症状がある場合/ [早めの受診をお勧めします→https://page.line.me/602fblla?openQrModal=true]
喉頭麻痺は、喉頭を動かす神経がうまく働かなくなる病気です。猫では比較的まれですが、中高齢の猫(平均11歳)に見られます。
Bristol大学の研究によると、喉頭疾患で紹介された35例の猫のうち、40%が喉頭麻痺と診断されました(Taylor SS et al., Journal of Feline Medicine and Surgery, 2009)。
主な症状には、以下のようなものがあります:
両側の喉頭が麻痺している場合、呼吸困難を起こすことがあり、緊急性が高くなります。
**喉頭麻痺の確定診断には、麻酔下での喉頭鏡検査が必要です。**当院では内科認定医による専門的な診断が可能です。
中高齢の猫では、喉頭にできる腫瘍も声の変化の原因になります。リンパ腫や扁平上皮癌などが報告されていますが、全体としては比較的まれです(Merck Veterinary Manual, 2024; PetMD)。
甲状腺機能亢進症は、10歳以上の高齢猫に非常に多い病気です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、全身の代謝が異常に活発になります。
この病気では、声の「質」が変わるというより、鳴き声の「頻度」が増えるのが特徴です(VCA Animal Hospitals)。
特徴的な症状:
甲状腺が腫れた場合は、喉頭を圧迫して声の質にも変化が生じることがあります。
他に以下の症状があれば注意が必要です:
放置すると危険: 甲状腺機能亢進症を放置すると、高血圧(眼底出血による失明の危険)や心臓病などの深刻な合併症を引き起こします。血液検査で簡単に診断できますので、中年齢以降では定期的なチェックをお勧めします。
\高齢猫の鳴き声が増えたら/ [血液検査などで明確な異常を除外します→https://page.line.me/602fblla?openQrModal=true]
避妊手術をしていないメス猫で、声が急に大きく変わった場合、発情期の可能性があります。
発情期のメス猫は、オス猫を引き寄せるために特徴的な大きな声で鳴きます。これは「コーリング(calling)」と呼ばれ、正常な行動です(VCA Animal Hospitals; ASPCA)。
発情期の特徴:
発情期の間は、普段とは違う甲高い声で鳴いたり、繰り返し長い間鳴いていることが特徴的です。
他の発情期のサインは以下の通りです:
メス猫は生後4〜6ヶ月頃から発情期を迎え、春から秋にかけて2〜3週間ごとに繰り返します。室内飼いで照明の影響を受けている猫では、1年中発情することもあります。
発情期の鳴き声は病気ではありませんが、猫にとってもストレスが大きいものです。繁殖の予定がなければ、将来の乳腺腫瘍の予防にもつながりますので、避妊手術をお勧めします。
環境の変化や心理的なストレスも、猫の発声パターンを変えることがあります。
研究によると、不安を感じている猫は発声の頻度や特徴が変化することが科学的に証明されています(de Rivera C et al., Journal of Feline Medicine and Surgery, 2017)。
ストレスの原因となるものには、以下のようなものがあります:
猫は痛みを隠す動物として知られていますが、時に鳴き声で痛みを表現します。
痛みによる鳴き声は、個体によって異なりますが、以下のように鳴く場合は痛みが原因の可能性が考えられます:
痛みの原因となりえる主な病気としては、以下の病気が挙げられます:
下部尿路疾患(FLUTD)の研究では、「vocalization during urination(排尿時の発声)」が主要な症状の一つとして報告されています(PMC学術論文; Cornell University College of Veterinary Medicine; AVMA)。
トイレで力んで鳴いたり、トイレ通い、トイレ以外の場所での排尿といった症状があります。
特にオス猫の場合、尿道が完全に詰まると数時間で命に関わる状態になります。緊急受診が必要です。
涎が増えたり、食べにくそうな様子があったり、口周りを気にする症状が認められます。
お尻周りを気にする頻度が増えたり、尾の付け根辺りを触ると怒ったり嫌がったりします。
高いところに登らなくなったり、触られる(ブラッシング)のを嫌がる様子が認められます。
\痛みのサインを感じたら/ [すぐにご相談ください→https://page.line.me/602fblla?openQrModal=true]
どうぶつ病院京都 桂の黒島院長は、**全国に48名しかいないJAHA獣医内科認定医**です。
JAHA獣医内科認定医とは、厳しい審査基準をクリアした専門医であり、複雑な症例や診断が難しいケースにも対応できる知識と経験を持っています。
これらの詳細な検査により、一般的な検査では見つけにくい原因も特定できる可能性が高まります。
当院では、セカンドオピニオンも受け入れております。
「検査をしたけれど原因が特定できない」 「治療を続けているが改善が見られない」
このような場合、これまでの検査結果や治療歴をお持ちいただければ、内科認定医の視点から新たなアプローチをご提案できることがあります。
遠方からのご相談も承っておりますので、まずはLINEでお気軽にご相談ください。
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治療は原因によって大きく異なります。
ウイルスや細菌感染が原因の場合、インターフェロンを使用した免疫療法やネブライザー、抗生物質、消炎鎮痛剤を用いて炎症を抑制します。
呼吸が苦しい場合は、必要に応じて酸素吸入を行います。
喉頭麻痺の根本的な治療法はまだ確立されていません。
軽症であれば、喉頭麻痺の原因となりえる基礎疾患を治療することで、呼吸困難の緩和を図ります。運動制限(安静)や、過剰なストレスをかけない、ダイエットを行うなどの生活習慣の改善が有効です。
重症の場合は、外科手術が適応となります。
甲状腺機能亢進症の治療は、主に内服薬(メチマゾール)、食餌療法、外科手術があります。
内服薬は抗甲状腺薬で、甲状腺ホルモンが作られるのを妨げる作用があります。食餌療法はヨウ素制限食を与える治療法で、甲状腺ホルモンの元となるヨウ素を制限したものです。内服薬や食餌療法でコントロールが難しい場合は、外科手術が検討されます。外科手術は、異常な働きをしている甲状腺を摘出します。
発情期が鳴き声変化の原因の場合は、根本的解決には避妊手術が適応です。何らかの理由で手術が難しい場合は、発情中に猫にかかるストレスを軽減させることが大事です。
ストレスや痛みが原因による鳴き声の変化が出る場合は、その原因を治療することで改善されます。
動物病院を受診される前に、以下のことを準備しておくと診断がスムーズになります。
自宅での猫の観察ポイントは以下の通りです:
当院ではLINEで症状のご相談も受け付けております。動画を送っていただくことで、受診の緊急性を判断することも可能です。
\事前相談をご希望の方へ/ [LINE登録はこちら→LINE予約URL]
完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすための事柄がいくつかあります。
定期的にワクチン接種を受けることで、猫風邪の原因ウイルスに対する抵抗力をつけ、重症化を防ぎます。
避妊や去勢手術は発情期の鳴き声を防ぐための根本的解決につながります。避妊や去勢手術は、鳴き声以外にも生殖器系の病気の予防にもなります。
安定した環境を提供したり、猫と沢山遊ぶことは、猫のストレス軽減につながります。
定期的に健康診断をうけることで、病気の早期発見につながります。また、早期発見することで、治療を迅速に始めることが可能となり、最終的に猫の健康寿命の延長につながります。
特に7歳以上の猫では年に1〜2回の血液検査をお勧めします。
猫の鳴き声は、私たちに何かを伝えようとする大切なコミュニケーション手段です。その声が変わったとき、それは猫からの重要なメッセージかもしれません。
最も多いのは猫風邪による一時的なものですが、喉頭の病気や甲状腺疾患など、治療が必要な病気が隠れていることもあります。中には、専門的な検査が必要な症例もあります。
いつも一緒にいる飼い主様だからこそ、「いつもと違う」という小さな変化に気づくことができます。
猫は痛みや不調を隠すことが得意な動物です。だからこそ、声の変化はとても大事なサインなのです。
**「これくらいで病院に行ってもいいのかな」と迷われたら、それは受診のタイミングです。**早めのご相談が愛猫を守ることにつながります。
当院では、飼い主様のどんな小さな心配事も大切にお聞きします。「こんなことで相談してもいいのかな」と思わず、気軽にご連絡ください。
内科認定医として、専門的な診断と治療を提供しております。セカンドオピニオンとしてのご相談も承っております。遠方からのご来院も対応しておりますので、まずはLINEでお気軽にご相談ください。
\24時間予約受付中/ [LINE予約・相談はこちら→https://page.line.me/602fblla?openQrModal=true]
監修:どうぶつ病院京都 桂 院長 黒島稔也(JAHA獣医内科認定医)
本記事は以下の学術的・専門的情報源に基づいています: