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猫が水をたくさん飲むのは病気のサイン?

2025.11.12

✅ 猫の正常な水の量と「異常」の見分け方
✅ 水をたくさん飲む時に疑うべき病気6つ
✅ どうぶつ病院での検査・治療の流れ

「なんとなく最近、うちの子水ばっかり飲んでる…」


そう感じたら、この記事を最後まで読んでください。その「なんとなく」が、愛猫の命を救う第一歩になります。

愛猫がいつもより多く水を飲んでいることに気づいたことはありませんか?猫はもともとあまり水を飲まない動物として知られているため、水飲み量の増加は飼い主さんにとって心配な変化の1つです。

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猫の水飲み量、どこからが「異常」なの?

正常な飲水量の目安

獣医学的には、体重1kg当たり1日50ml以上の水を飲む場合を「多飲症」と定義します。

具体例で覚えましょう:

  • 3kgの猫: 150ml以上(コップ約3/4杯分)
  • 4kgの猫: 200ml以上(コップ約1杯分)
  • 5kgの猫: 250ml以上(コップ約1杯強)

ただし、以下の状況では一時的に水を多く飲むのは正常です:

  • 夏場や暖房で室内が暑い時
  • ドライフードをメインで食べている時
  • 遊んだり走り回った後
  • 部屋が乾燥している時

重要なのは「いつもと比べて明らかに増えた」という変化です。

参考文献: DiBartola SP. Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Disorders in Small Animal Practice. 4th ed. Elsevier; 2012.

水をたくさん飲む原因となる病気6つ

1. 慢性腎臓病(腎不全)|7歳以上の高齢猫に多い

どんな病気?
腎臓の機能が徐々に低下し、体の老廃物を排出できなくなる病気です。猫が最もかかりやすい病気の1つです。

こんな症状が出ます:

  • 水をガブガブ飲む(1日に何度も水入れに行く)
  • おしっこの量が増える(色が薄い)
  • 食欲が落ちる
  • 体重が減る
  • 毛並みがボサボサになる
  • 口からアンモニア臭がする
  • 嘔吐が増える

飼い主さんが気づきやすい変化:

  • 「夜中に何度も水を飲みに起きる」
  • 「トイレ掃除の回数が増えた」
  • 「ご飯を残すようになった」

治療と予後:
残念ながら、失われた腎機能は元に戻りません。しかし、早期発見できれば、食事療法・点滴・内服薬で進行を大幅に遅らせることが可能です。

参考文献: International Renal Interest Society (IRIS). IRIS Staging of CKD. 2019.


2. 糖尿病|肥満猫は要注意

どんな病気?
血液中の糖分(グルコース)がうまく使えず、血糖値が高い状態が続く病気です。肥満猫、中高齢猫(7歳以上)で発症しやすい傾向があります。

こんな症状が出ます:

  • 水を大量に飲む(一気飲みすることも)
  • おしっこの量が激増
  • 食欲があるのに痩せていく(これが最大の特徴)
  • 毛並みが悪くなる
  • 後ろ足がふらつく(歩行異常)

飼い主さんが気づきやすい変化:

  • 「よく食べるのに、骨が浮いてきた」
  • 「水入れがすぐ空になる」
  • 「トイレシートがびしょびしょ」

治療と予後:
インスリン注射による血糖コントロールが必要です。最初は怖いと感じるかもしれませんが、適切に管理すれば、通常の生活を送れます。

参考文献: Feldman EC, Nelson RW. Canine and Feline Endocrinology. 4th ed. Elsevier; 2015.


3. 甲状腺機能亢進症|10歳以上の高齢猫に多い

どんな病気?
甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、体の代謝が異常に高まる病気です。10歳以上の高齢猫で非常に多く、放置すると心不全を起こします。

こんな症状が出ます:

  • 水をがぶ飲みする
  • 食欲旺盛なのに痩せる(糖尿病と似た症状)
  • 異常に活発になる、落ち着きがない
  • 攻撃的になる、夜鳴きが増える
  • 心拍数が上がる、呼吸が速い
  • 嘔吐や下痢

飼い主さんが気づきやすい変化:

  • 「年を取ったのに、やたら元気すぎる」
  • 「性格が変わった気がする」
  • 「食べても食べてもガリガリになる」

治療と予後:
内服薬、外科手術などの選択肢があります。比較的予後が良い病気で、早期に治療すれば通常の寿命を全うできます。

参考文献: Peterson ME. Hyperthyroidism in cats: what’s causing this epidemic of thyroid disease and can we prevent it? J Feline Med Surg. 2012;14(11):804-818.


4. 腎盂腎炎|細菌感染が腎臓まで到達

どんな病気?
腎臓内部(腎盂)に細菌が感染して起こる炎症です。膀胱炎や尿路結石から細菌が逆流して発症することが多く、免疫力が低下している猫(猫エイズ、白血病ウイルス感染など)で起こりやすくなります。

こんな症状が出ます:

  • 水を多く飲む
  • 発熱(体が熱い、耳が熱い)
  • 食欲不振
  • 背中を丸めて痛がる
  • おしっこの時に鳴く(痛がる)

治療と予後:
抗生剤を2〜4週間投与します。治療が遅れると、敗血症(全身感染)や慢性腎不全に進行するため、早期診断が重要です。

参考文献: Westropp JL, Sykes JE, Irom S, et al. Evaluation of the efficacy and safety of high dose short duration enrofloxacin treatment regimen for uncomplicated urinary tract infections in dogs. J Vet Intern Med. 2012;26(3):506-512.


5. 子宮蓄膿症|避妊していない雌猫は要注意

どんな病気?
子宮の中に膿がたまる病気で、避妊手術を受けていない雌猫のみに発症します。命に関わる緊急疾患です。
感染や炎症により体内の水分バランスが崩れ、急激に水をたくさん飲むようになります。ただし、猫で多飲多尿の症状は見られない場合もあります。

こんな症状が出ます:

  • 急に水を大量に飲む
  • 陰部から膿のような分泌物
  • お腹が膨れる
  • 発熱
  • 嘔吐、食欲不振

治療と予後:
緊急手術が必要です。避妊手術を受けていれば100%予防できる病気なので、若いうちの避妊手術を強くお勧めします。

参考文献: Hagman R. Pyometra in small animals. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2018;48(4):639-661.


6. その他の原因

  • 肝臓病: 黄疸(白目や歯茎が黄色い)を伴うことが多い
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群): 猫では稀だが、お腹がぽっこり膨れる
  • 尿崩症: 非常に稀だが、極端な多飲多尿が特徴
  • 心因性多飲症: ストレスが原因で水を飲み過ぎる(他の病気を除外してから診断)

【自宅でできる】飲水量の正確な測り方

動物病院を受診する前に、実際の飲水量を測定しておくと診断に非常に役立ちます。

準備するもの

  • 計量カップ(200〜500ml)
  • メモ用紙
  • 24時間の時間

測定手順(簡単4ステップ)

ステップ1: 朝、水入れを空にする
いつも使っている水入れの水を全て捨て、きれいに洗います。

ステップ2: 計量した水を入れる
計量カップで200〜300mlの水を測り、水入れに入れます。この量をメモします。
(例:「朝8時、300ml入れた」)

ステップ3: 24時間後、残った水を計量する
翌朝同じ時刻に、残っている水の量を計量カップで測ります。
(例:「翌朝8時、残り100ml」)

ステップ4: 飲んだ量を計算する
入れた量 – 残った量 = 飲んだ量
(例: 300ml – 100ml = 200ml飲んだ)

注意点

  • 複数の水入れがある場合: 全ての水入れで測定が必要
  • 自動給水器を使っている場合: 一時的に普通の水入れに変更
  • ウェットフードを食べている場合: 食事からの水分も計算に入れる
    • ウェットフード100g = 約75mlの水分
    • ドライフード100g = 約10mlの水分

体重1kg当たりの飲水量を計算

計算式:
1日の飲水量(ml) ÷ 体重(kg) = 1kg当たりの飲水量

例:

  • 4kgの猫が250ml飲んだ場合
    250ml ÷ 4kg = 62.5ml/kg → 多飲症の可能性あり
  • 3kgの猫が120ml飲んだ場合
    120ml ÷ 3kg = 40ml/kg → 正常範囲内

この数値を動物病院に伝えると、診断がスムーズになります。

参考文献: DiBartola SP. Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Disorders in Small Animal Practice. 4th ed. Elsevier; 2012.

まとめ|「気になったらすぐ受診」が愛猫を守る

猫が水をたくさん飲むようになる背景には、慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症など、早期治療が予後を大きく左右する病気が隠れています。

この記事で最も伝えたいこと:

「なんとなく」の違和感を無視しないでください
猫は具合が悪くても隠します。症状が出た時点で進行しています
腎臓は一度壊れたら元に戻りません。早期発見が全てです
「様子を見る」は手遅れになる最大の原因です

「病院に行くほどかな…」と迷っているなら、その迷いがあること自体が受診のサインです。
「なんとなく最近よく水を飲んでいる気がする」「尿の量が増えたかも?」といったちょっとした違和感でも、実際に検査をしてみると病気が見つかるケースは珍しくありません。

特に猫は腎臓のトラブルを抱えやすい動物であり、腎機能は一度失われると元に戻すことが難しい臓器です。定期的な健康診断や、日常の飲水量・排尿の観察は、愛猫の健康を守るために欠かせません。

深刻な病気でなかったとしても、「何でもなかった」という安心は、他には変えられません。
大切な家族である猫のために、少しの変化にも目を向けてあげてください。


どうぶつ病院京都 桂からのお約束

当院は、飼い主様とどうぶつの幸せを第一に考えています。

  • 丁寧な説明で、納得してから治療を進めます
  • 無理な検査や治療は勧めません
  • LINE予約で、待ち時間なくスムーズに受診できます

「ちょっと気になる」「これって普通?」という些細な心配でも、遠慮なくご相談ください。


今すぐできること

□ 愛猫の飲水量を1日測定してみる
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監修: どうぶつ病院京都 桂
院長 黒島稔也

プロフィール
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